それは自己愛のとても強い狐でした
毎朝 般若心経を読み 神道の大祓詞を奏上します
それでも 決して自己愛の業から解放されないのです
永遠に 永遠に
狐は悲しむこともせず 無益な愛の営みをくりかえします
来る日も 来る日も 町はずれに借りた 安アパートの部屋を 尻尾の毛で埋め尽くすのです
下品で 卑猥な口元を 鋭く尖った牙で縫い合わすのは
この世の中で私が一番きれい
と褒めて 褒めて 褒めて もっと褒めて もらいたいからです
小さな穴の奥にある 小さな井戸の中で 私が一番きれいなのよ と思えることが 幸せなのです
そんな幸せを 失いたくない
誰にも 犯されたくない
嘘で固めた呪術を唱えて 私は卑弥呼の生まれ変わりだと鏡に教え込ませたら
天井に唾をはいて 己を洗い清めるのです
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